IFFR2010報告1

初日にオープニングの長編1本を観て、翌日から5日間で長編1本、短編約150本、毎日ほぼ朝から晩まで映画を観た。他にもまだまだ観たいものが沢山あった。これだけ観ても観足りない感あり。ここに来て初めて、俺は映画観賞が案外好きかも知れない、と自覚したのだった。というのも、普段映画を余り、というか殆ど観ない方なので。もっと積極的に観ることができそうな気がしてきた。

とは言え、全てが面白かった訳では無く、つまらなかった多くの作品は跡形もなく忘れてしまってます。記憶に残っている作品を以下に挙げてみます。

1月27日夜、オープニングは同じ時間帯に長編2本が上映された。1つは、”Paju”(Park Chan-Ok)。もう一つはタイトルなど一切シークレットだったので、期待してこっちを選んだ。
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“Eighteen” Jang Kun-Jae, 2009, South Korea, 95 min.
映画祭ディレクターが「今夜はコリアンナイトです」といって始まったのがこれ。韓国の青春恋愛もの。厳格な彼女の父親が、2人を引き離してしまう。なんかよくありそうな感じだが。回想シーンと現実が入り混じって、お互いの想いが、すごく切なく伝わってくる。なんかよくありそうだ。今もこの映画が頭から離れない。とてもいい映画だと思う。ストーリーが単純だと、英語字幕でも結構いけることが判明。

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“Let Each One Go Where He May” Ben Russell USA 2009 135min. no dialogue
ベン・ラッセル、初の長編。アフリカのとある村の2人の男の日常をひたすらカメラが追う。バスに乗り、町へ行く、砂金を採る、木を切り倒す、何ともない彼らの日常をただひたすら追う10分13カット。ここまでシンプルだと、被写体との接触をぎりぎりまで絶ったドキュメンタリーのように思えてくるが、真相はなぞである。1つだけ触れておきたいシーンがあるけど、分かる人にはネタばれになるのでよしておこう。すごく好きな作品。

ベン・ラッセルはおっとこ前である。魅力たっぷりだ。自分のDVDと彼のTRYPPSシリーズDVDを交換できたのはとても嬉しかった。ちなみに主演のアフリカ人を連れて来ていた。ベンは現地の言葉を使えるらしい。

以下、全てショートプログラム。■がプログラム名。印象に残った作品をピックアップ。詳しい内容と大きな写真はIFFRのHPで、Film A to Zで検索してください。
■Tiger Awards Competition Short Films 1
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“Mudanza” Pere Portabella, 2008, Spain, 20 min. no dialogue
コンペ対象作品は極力観ようと思って観てみたが、めぼしいものは少なく。今思い出すと、この作品はとても素晴らしい。スペインの詩人Federico Garcia Granada。彼が亡くなり、70年を経た家から、家具やピアノ、絵画など、遺品を運び出す様子が淡々と描かれる。白壁が美しい家、余計な説明が無く、静謐で詩情溢れる素晴らしい作品。Federico Mompou、Morton Feldmanのピアノ音楽を想起させる。
■Tiger Awards Competition Short Films 2
■Tiger Awards Competition Short Films 3:
■Tiger Awards Competition Short Films 4:
■Tiger Awards Competition Short Films 8:
■8 Times 16
私の作品も含まれているプロ(グラム)。
プロの説明に、The beauty of the film material itself, with a leading role for grain, close-ups, contrast and texture. From whispering poetry to noise.とあるように、フィルムのマテリアルに焦点を当てた作品が並ぶ。こういったマテリアル系やハンドプロセスに興味を持っている人は沢山いるようで、初回のチケットはソールドアウト。キャパは100人位の小さめの会場だったけど、嬉しい。2回目もそこそこの集客。どうやら、自分の作品はとても幸運なプログラムに選ばれたようである。
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“Sound over Water” Mary Helena Clark, 2009, USA, 5 min. no dialogue
どうやってこんな魅力的な青色を出してるのか。聞いてみれば良かった。彼女があまりにキュートだったので、俺は尻込みした。なんだそれ。
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“H(i)J” Guillaume Cailleau, 2009, Germany, 6 min. no dialogue
極限までハイコントラストに仕上げられた硬質なイメージ。
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“Dorothy (Ragged Film #4)” Shimada Ryohei, 2008, Japan, 9 min. no dialogue
レッドクロス上映会でも一緒だった島田氏の8mmコラージュ&ペイント作品。もう8回位観たかな(笑) 解像度をもっと上げたらすごい事になりそう。一番前の席で観たので、バスラッチの音も相まって強烈だった。
■Altered States
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“Still in Cosmos” Makino Takashi, 2009, Japan, 18 min. no dialogue
今回観た全ての作品の中で一番興奮した。すでに日本で拝見した作品だったが、何回観てもその都度異なるイメージを発見することができる。彼はそれを狙っていると、トークで語っていた。内容が素晴らしいと、拍手も一際大きく、指笛までなる始末。Q&Aでの質問もたくさんあるし、終ったあと観客が彼のところに集まってくる。
■Communication Breakdown
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“Insurrectionists Progression, The” Sylvie Zijlmans, Hewald Jongenelis, 2010, Netherlands, 15 min. no dialogue
息子と二人でスーツを10着程重ね着し、意味の無い行動にふける。シュールでナンセンスなコメディ(?)。かなり面白かった。セグウェイはズルい。上映後のトークに今映っていた親父(出演兼監督)が登場するのも憎い。こういったセンスのユーモアに出会えたのは新鮮だった。外国人の観客も笑っていた。
■Exercises in Film
こちらもフィルムにこだわったプログラム。質の高い作品ばかりだった。
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“Laws of Physics” Michael Palm, 2009, Austria, 15 min. no dialogue
天井から見下ろすカメラで、ゆっくりと排水口に向かってズームインしていく。排水口から漏れてくる会話や雑音も次第に音量を増していく。暗闇を突き抜け、最後にはフィルムの粒子が表出する。奥の奥まで首を突っ込んでいく感覚。
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“Flash Camera Movie” Sebastjan Henrickson, 2009, Canada, 23 min
使い捨てカメラのフィルムをフッテージに使用し、植物などのイメージをリズミカルに展開させていく作品。音楽に軽快なサンバが使われていて、お、これは新しいな!と思った。時に、音楽のリズムは、映像が持つオリジナルのリズムを覆ってしまう程強いものである。でもこの作品では決して失敗していない気がする。牧野氏の作品は、イメージと音がぶつかり合い、合体して、強烈なエネルギーの塊となって、体全体に向かってくる。僕はこれを「元気玉」と呼んでいる。
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“Trees of Syntax, Leaves of Axis” Daïchi Saïto, 2009, Canada, 10 min. no dialogue
昨年の吉祥寺での爆音オールナイトでも上映された作品。今回はフィルム上映。豊かな色彩の木々と即興のバイオリンが絡み合う、とても美しい作品。カナダ在住の日本人。人柄も素晴らしい。今回会った人達はみんな優しくて素敵な人達だった。こういうところに来ると、一つ一つの出会いがとても嬉しい。
■Family and Ghosts
■Jim Jennings – NYC & Field Recordings
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“Wall Street” Jim Jennings, 1980, USA, 5 min. silent
通りを歩く人の影を、バスに乗りながら撮影したようだ。日常の何ともないシーンをカメラの眼で捉えると、新しい光景が生まれる。シンプルで素晴らしい映画。
■Natural Elements
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“Earth” Ho Tzu Nyen, 2009, Singapore, 40 min. no dialogue
牧野氏がぼろクソに言っていた、謎の大作。終末の地球を描いたらしい。音楽が全編へヴィーメタル/ハードロック。日本で観る機会があったら観てみてください。
■Romantic Melancholia
■Rules of Entanglement
■Timequake
このプロは朝9時半開始で、寝坊してしまい、2作品を見逃した。前夜、オランダでポピュラーなユネーヴァ(jeneva)という、ジンの起源になったスピリッツを飲んだから。それでも良く起きた方。基本的に毎朝10時~夜11時過ぎまで映画を観て、昼~深夜まで酒を飲んでいたのだ。良く頑張った!お馬鹿!
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“Zwölf Boxkämpfer jagen Viktor quer über den großen Sylter Deich 140 9” Johann Lurf, 2009, Austria, 3 min. no dialogue
ヨハンのはラスト1分しか観れなかった…。残念。35mmの映画フィルムをフッテージに使用した、構造映画的な作品かもしれない。タイトルにも深い意味があるようだ。ヨハンと牧野氏と一緒に、アジアレストランで食事をし、凍った路面でスケートをしたのは最高の思い出である。
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“57.600 secondi di notte e luce invisibili” Flatform, Roberto Taroni, Annamaria Martena, 2010, Italy, 5 min. no dialogue
照明の効果によって時間の経過を操作した、不思議な感覚に陥る作品。
■Traces and Reflections
■Two Worlds
Ben RiversとMakino Takashiの作品1本ずつというプロ。ベン・リバースは、相変わらず彼らしい世界観。贅沢な時間。
■Short Features
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“A Grammar for Listening (Parts 1-3)” Luke Fowler, 2009, United Kingdom, 58 min. no dialogue
2年前だろうか、東京のLoop-Lineで角田さん企画の時に、たまたま本人と会ったことがある。角田さんとのコラボで、横トリに出品する際の打ち合わせで来ていたようだ。俺が16mmのBolexを持っていて、「それ俺も持っているよ!」と声を掛けてきたのだ。Bolexの繋ぐ縁はすごい。カタログを見ていて偶然ルークの名前を見つけ、しかも角田さんもサウンドで参加しているというので、観ることにした。タイトルが何ともいい。自然のランドスケープにフィールドレコーディングの音。途中で寝てしまったが、良かった。ディナーの時に話しかけたら、覚えていてくれた。
DINAMO(Distribution Network of Artists’ Moving-image Organizations)とは、アメリカ、カナダ、ヨーロッパのインディペンデント実験映画の配給会社ネットワーク。以下のように、実験映画では割と有名な配給会社のディレクターが、それぞれ何作品かをセレクトしたものが上映された。内容は玉石混合。
■DINAMO P&I Screenings 1
Filmform
Light Cone Distribution
Video Data Bank
■DINAMO P&I Screenings 2
Filmbank
LUX
Electronic Arts Intermix
■DINAMO P&I Screenings 4
Sixpack Film
Heure Exquise!
The Canadian Filmmakers Distribution Centre
ちなみに観れなかったけど、part3は
V tape, Arsenal Filmverleih, Netherlands Instituut voor Mediakunstの3社。
■Kino Climates – Films & Performances 3
Part4まであったが、人気でチケットが取れず3だけ観た。フィルムパフォーマンスは他の場所でも毎日、LukeやGuy Sherwin、Billy Roiszなどがやっていたようだ。失敗したー。
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“The Severe Illness of Men” Igor Aleynikov, Gleb Aleynikov, 1987, USSR, 10 min.
町の風景などを映した、1920-30年代を思わせる古びた白黒フィルム映画、旧ソ連・ロシアの独特な空気が漂う。多分、前半部分はその時代のフィルムだと思う。が、ラストシーンは突如、電車内で、一人の青年が、必死の抵抗虚しく、おっさんにレイプされ、涙を流す。それを見ながらマスターベーションする別のおっさん。めちゃくちゃだ。
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“Shot Film” Greg Pope, 2009, United Kingdom, 4 min. no dialogue
初めて名前を聞いたが、直球の実験映画作家と言っていいだろう。この作品は、何でショットしたか分からないが、実に独特なスクラッチの形状だ。映写時にカリカリと音がしていたので、おそらく実際に穴が開いているのではなかろうか。サウンドは光学再生でブツブツ系。奥山順市さんに近い。

ざっとこんなところです。結果的に”Eighteen”以外はほぼノーダイアローグだ。英語がもう少しわかれば、面白かったかもと思うものもあった。長編も沢山観たかった。全作品の4分の1も観ていないと思う。

ロッテルダム国際映画祭ではジャンルや国境を越えて様々な映画が上映される。商業映画もインディペンデント映画もほぼ平等だ。いいものはいい、そう言い切れる姿勢はとても頼もしい。(まあ商業映画があるから、僕のような金にならない映画も扱ってもらえているのかとは思うが。)

今回は大規模なアフリカ映画の特集が組まれていた。埋もれている映画を発掘し、積極的に紹介する。僕達が新たな映画を享受できると共に、アフリカの映画産業に恵みの雨をもたらすだろう。(USA for Africa をふと思い出す。しかし、ベネフィットソングや募金などとは性質が異なる。)これは、映画という文化を耕し育てる行為なのだ。

観客や作家、ディストリビューター、他国の映画祭のディレクター、数えきれない人達が、いたる所で笑顔で語り合い、交流を深めていく。この場で繋がる個人規模のネットワークも、ひいては大きなうねりとなるはずだ。
ロッテルダム国際映画祭が地球規模で映画文化を支える様々な重要な役割を担っているということを、生で感じて、ひどく感動したのだった。自分たちも個人で出来ることは実行しなくてはいけないなと思う。

ロッテルダム報告、まだまだ続きます!!
牧野氏、島田氏もブログに報告をアップしてるのでチェックしてみてください。セレクトした作品が殆ど被ってる(笑)
http://makinokino.exblog.jp/
http://d.hatena.ne.jp/shimatrop/
そういえば、今年も恵比寿映像祭が写美で開催されるよう。とても面白そうだ。
http://www.yebizo.com/

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